防鳥ネットは、倉庫や工場、商業施設などの鳥害対策として非常に有効ですが、「設置すれば安心」と思われがちです。実際には、素材の劣化や外的要因により、年数が経つと効果が薄れてしまう場合があります。
自動車や空調設備に定期的なメンテナンスが必要なように、常に紫外線や風雨に晒される防鳥ネットにも寿命があり、適切な点検とメンテナンスが不可欠です。
今回は、ネット工事のプロとして、施設の資産価値と安全を守るための「防鳥ネットの寿命とメンテナンス」について解説します。
防鳥ネットの「寿命」は何で決まるのか?
防鳥ネットの耐用年数は、一般的に約10年と言われています。しかし、これはあくまで目安であり、以下の3つの要因によって大きく左右されます。
1. 素材の品質と種類
ネットの主原料であるポリエチレンにも、品質には差があります。耐候性に優れ、線径の太い素材は、紫外線による劣化に強く、長期間にわたって強度を維持します。逆に、安価な単線ネットは数年で硬化・劣化し、破れやすくなる傾向があります。施設の用途や環境(化学物質への耐性など)に応じた、適切な素材選定が寿命の第一歩です。
2. 設置環境の過酷さ
ネットが設置される環境は、その寿命を決定づける大きな要因です。
- 紫外線: 日当たりの良い屋上や壁面は劣化が早い傾向にあります。また、方角も重要。南に面したマンションのベランダなどは寿命が短くなります。
- 風、雨、雪: 常に強風に煽られる場所や、積雪量の多い地域ではネットや固定具への負荷が大きくなります。
- 塩害・化学物質: 沿岸部の塩害や、工場から排出される化学物質は、ネットだけでなく固定用のワイヤーや金具の腐食を促進させます。
3. 初期施工の品質
どれだけ高品質なネットを使用しても、施工品質が低ければ意味がありません。ネットに適切な張り(テンション)を持たせ、壁面の材質に合った確実な方法で固定されているか。隙間なく、鳥の侵入を許さない丁寧な施工が、長期的な耐久性の基礎となります。

担当者様でも確認できる「劣化のサイン」
専門家でなくとも、目視で確認できる劣化のサインがあります。半年~1年に一度、特に台風や大雪の後には、以下の点をご確認ください。
- 【サイン1】硬化・変色
ネットが紫外線で劣化すると、柔軟性を失い硬くなります。触るとパリパリしたり、色が抜けたように変色したりするのは初期の劣化サインです。 - 【サイン2】たるみ・ゆるみ
ネットにたるみが生じている場合、ネット自体が伸びているか、周囲を張っているワイヤーや固定具が緩んでいる可能性があります。わずかなたるみが鳥の侵入を許す隙間となります。 - 【サイン3】破れ・ほつれ
経年劣化や飛来物による物理的なダメージで、ネットに破れやほつれが発生します。カラスのような賢い鳥は、小さな穴でもこじ開けて侵入することがあります。 - 【サイン4】固定金具の錆や腐食
最も注意すべきサインの一つです。固定金具の腐食は、ネット全体の強度低下に直結し、強風時にネットが剥がれて脱落する事故に繋がる危険性があります。

これらのサインを発見した場合、あるいはネット内部に鳥が侵入していたり、フン害が再発したりした場合は、すでにネットの機能が損なわれている証拠です。
速やかに専門家による点検をご依頼ください。
清掃と点検のポイント
防鳥ネットは年1〜2回の定期点検が理想です。状態確認のほか、ネットに付着したホコリや落ち葉、鳥の羽なども清掃しましょう。
軽微な損傷のうちに補修を行うことで、ネット全体の張り替えといった大規模な修繕を防ぐことができます。これは、結果として施設の維持管理におけるトータルコストの削減に繋がります。
長期的な運用のために
防鳥ネットは、施設の衛生・安全・美観を守るための「設備」です。長期的な視点を持ち、適切なメンテナンスを行うことが、お客様の大切な資産価値を守ることにつながります。
弊社では、施工はもちろん補修工事や交換工事も承っております。少しでも気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。